市況レポート
今週どの業種・テーマに注目すべきかを毎週解説。
スクリーニングの前に必ず読んでください。
相場の流れを読んで、注目セクター・警戒ポイントを毎週まとめたレポートです
今週のポイント ── 3行でわかる今の相場
忙しい方・投資を始めたばかりの方は、まずこの要点だけ押さえてください。くわしくは各セクションをご覧ください。
9/4(金)夜米・8月雇用統計(9月利上げの判断材料。今週最大の焦点)
▼ ここから先は、上の内容をくわしく解説しています ▼
- 1追い風セクターで銘柄を絞り込む
スクリーニングツールでセクターを選ぶと、該当銘柄の一覧が表示されます
- 2気になる銘柄の財務・ニュースを確認する
会社名を入れるだけで、財務状況・最新ニュース・リスク診断をAIがまとめます
- 3投資基準を満たすか診断する
チェックリストで条件をひとつひとつ確認し、判断の根拠を記録します
今の市場、何が起きているのか(マクロ環境)
今の相場をひと言で言うと、焦点が完全に「金利」に移った局面です。先週は株価が上がった週でしたが、本当の材料は金曜の夜、東京市場が閉まった後に出ました。
ウォーシュFRB議長が「利上げ」を示唆
日本時間8月28日(金)の夜11時、アメリカの中央銀行(FRB)のトップであるウォーシュ議長が、ジャクソンホール会議で講演しました。
議長は物価の上がり方(インフレ)が目標を超えていることに懸念を示し、インフレが2%の目標に向かって十分な速さで下がらなければ「やるべき仕事がある」と述べました。市場はこれを、これまでで最も明確な利上げのサインと受け止めています。
この発言を受けて、アメリカが9月に利上げするという見方は40%台から60%前後へ一気に上昇しました。ある集計では9月の利上げ確率は57.5%とされています。
エヌビディア決算は「文句なし」の内容
8月27日(木)朝5時20分ごろに発表された、AI半導体最大手エヌビディアの決算です。中身は市場予想を明確に上回りました。
| 項目 | 実績(市場予想) |
|---|---|
| 売上高 (5〜7月期) |
962億2,100万ドル
前年同期比 +106%/予想921億7,000万ドル 13四半期連続で過去最高 |
| 純利益 | 597億ドル 前年同期264億ドル。2倍以上に拡大 |
| 次の四半期 の見通し |
1,080億ドル 予想1,042億ドル。こちらも上回る水準 |
さらに決算説明会では、2028年1月期の売上高が前期比で約70%増える見通しが示され、アマゾンのクラウド部門(AWS)に追加で200万基のGPUを展開する計画も発表されました。AI需要の減速を心配していた投資家に、大きな安心感を与えた内容です。
ここは順番を正確に押さえてください。決算そのものは強く好感され、アメリカでエヌビディア株は8.73%高(227.98ドル)まで買われました。ところがその翌日、ウォーシュ議長の発言による金利上昇観測で4.58%安と反落しています。
つまり「決算が悪かったから下がった」のではなく、「決算で上がった後、別の理由(金利)で下がった」というのが正しい順序です。なお27日の東京市場が伸び悩んだのは、アメリカで株価が大きく上がる前の時間帯だったためです。
また決算説明会では、メモリー価格の上昇が利益率を圧迫する可能性にも触れられました。売上が伸びても、利益率が下がれば利益の伸びは鈍ります。
ちなみにメモリーを作る側にとっては、価格上昇は売値の上昇要因。実際にこの決算を受けて韓国のメモリー各社の株価は上昇しました。同じニュースが、立場によって追い風にも逆風にもなります。
ここは初心者の方がいちばんつまずくところなので、ゆっくり説明します。
株価は「その会社が将来どれだけ稼ぐか」を、今の価値に換算して決まります。ここで質問です。「10年後にもらえる100万円」と「今もらえる100万円」は同じ価値でしょうか。違いますよね。今もらえたほうが得です。
だから未来のお金は、今の価値に直すと目減りします。この目減りの度合いを決めるのが金利です。金利が高いほど、遠い未来のお金は今の価値では小さく見積もられます。
つまり「これから何年もかけて大きく成長する」という期待で買われている株ほど、金利が上がると評価が下がりやすい。AI・半導体や不動産はまさにこのタイプです。逆に小売のように「今すでに毎日の売上でしっかり稼いでいる」会社は、価値の大半が近い将来の利益なので影響が小さい。だから同じ日に小売は上がり、半導体は下がったのです。
円安が160円台に乗せました
日本時間8月29日(土)朝までのニューヨーク市場で、ドル円は一時160円20銭まで円安が進みました。終値は159円90銭〜160円00銭です。
この160円という数字には特別な意味があります。7月末に日米が協力して行った「円安を止めるための介入」以降、160円台をつけたのはこれが初めてです。7〜8月の円買い介入は過去最大の15.3兆円規模でしたが、それでも約4週間で元の水準に戻ってきたことになります。
理由は上の話とつながっています。アメリカの金利が上がると、金利の高いドルで持っていたほうが得なので、円が売られてドルが買われる──これが円安の仕組みです。
アメリカが利上げをするかどうかとは別に、日本には日銀が追加の利上げをするかという独自の論点があります。日本の長期金利(10年国債の利回り)は8月半ばに一時2.9%台と、約30年ぶりの高い水準まで上がる場面がありました。
日本の金利はアメリカの金利につられて動くことが多く、「アメリカが利上げしそうだ」というニュースは日本の銀行株にも影響します。ただし常に連動するわけではありません。影響し合うけれど別のもの──この距離感で見てください。
お金の流れはどうなっているのか(需給分析)
2週ぶりの上昇。一時700円超高も、講演を前に上げ幅縮小
銀行・証券が牽引。市場全体はむしろ底堅い
週明けは安く始まる可能性を示している
| 日付 | 終値・前日比 | 中身 |
|---|---|---|
| 8/24 (月) |
65,528.09円 ▲488.27円 | 世界的な金利上昇でAI・半導体に売り |
| 8/25 (火) |
65,856.43円 +328.34円 | 一時918円安から切り返し |
| 8/26 (水) |
66,262.16円 +405.73円 | 3日続伸。金融・医薬品が上位 |
| 8/27 (木) |
66,131.98円 ▲130.18円 | エヌビディア好決算も朝高後に失速 |
| 8/28 (金) |
66,405.56円 +273.58円 | 反発。講演を前に上げ幅を縮小 |
| 週間の騰落 +389円20銭 2週ぶりの上昇 | ||
金曜の東証プライムの売買代金は8兆1,223億円、値上がり873銘柄・値下がり631銘柄。そしてTOPIXは7日続伸しました。買われたのは三菱UFJや三井住友FGなどの銀行株、野村や大和などの証券株です。
ここが今週いちばん見落としやすいポイントです。日経平均の上げ幅は0.41%でしたが、市場全体を映すTOPIXはそれ以上に底堅かった。指数の数字だけを見ていると、この「中身の強さ」を見落とします。
| 指標 | 終値・前日比 |
|---|---|
| NYダウ | 53,559.99ドル ▲9.45ドル 小幅反落 |
| S&P500 | 7,711.76 ▲19.28(▲0.25%) |
| ナスダック | 26,402.42 ▲138.93(▲0.52%) ハイテク中心の指数 |
注目すべきは、指数全体の下げは小さいのに、半導体だけが明確に売られたことです。業種別では小売が上昇した一方、半導体・半導体製造装置は下落。大型テックの中でもアマゾン・グーグル・マイクロソフト・アップルが上昇する一方、エヌビディアは4.58%安でした。
今の時流で注目できるセクター(追い風セクター)
金融(銀行・証券・保険)── 今いちばん追い風が重なっている
金曜は三菱UFJや三井住友FGなどの銀行株、野村や大和などの証券株がそろって買われ、TOPIXの7日続伸を支えました。そこへ週末、アメリカの利上げ観測が加わっています。
理由はシンプルです。銀行の本業は「預金を集めて、それを貸すこと」。利益は、貸すときの金利と預金に払う金利の差から生まれます。金利が上がれば、この差が広がる期待が生まれます。
- 日米ともに金利が上昇方向。貸出の利ざや拡大への期待が高まっている
- 日本の長期金利は8月に一時2.9%台と約30年ぶりの高水準をつけた
- 金曜のTOPIX7日続伸を実際に牽引しており、資金が向かっている事実がある
石油・資源 ── 中東情勢で高値圏
中東情勢の不透明感が続き、原油は高値圏を維持しています。原油価格が上がれば、資源を扱う企業の収益には追い風になります。
- 中東の不透明感が継続し、原油が高値圏で推移している
- 資源価格の上昇は、権益を持つ企業の収益に直結しやすい
- 円安も、ドル建てで稼ぐ資源関連にとっては円換算額を押し上げる要因
ただし方向はニュース次第で急変します。8月初旬には「合意が近い」という観測で原油が急落し、その翌日には交渉が難航して急反発、ということが実際に起きました。値動きの荒さは前提として見ておく必要があります。
今の時流で慎重に見る根拠があるセクター
AI・半導体 ── 需要は本物、しかし金利が逆風
エヌビディアの決算は売上106%増、次の四半期見通しも予想超という文句のない内容でした。AI需要そのものは、少なくとも2028年まで見込まれています。
しかし決算説明会ではメモリー価格の高騰による利益率への懸念も示され、さらにその翌日にはアメリカの利上げ観測という逆風が加わりました。つまりAI・半導体は今、「AI需要という追い風」と「金利上昇という逆風」を同時に受けている状態です。
- AI需要は本物と確認された。日本にも製造装置・検査・材料・電線・電力と関連企業が多い
- 一方で金利上昇は、将来の成長期待で買われている株の評価を下げやすい
- 値動きが荒い。8月だけでも1日で900円を超える指数の上下があった
逆に雇用統計が強ければ、金利側の力がさらに強まります。
判断が正しくても、値動きに耐えられなければ結果は変わってしまいます。この業種は「方向」だけでなく「振れ幅」も込みで見ておく必要があります。
非鉄金属・電線 ── AIの「裏方」として注目
27日の東京市場では、半導体から資金が抜けるなかで非鉄金属が業種別の上位に入り、古河電気工業が4.71%高まで戻す場面がありました。半導体そのものとは別の動きをすることがある点が特徴です。
- AIを支える裏方として独自の需要テーマがある
- ただし半導体全体の地合いに引きずられやすく、逆風を共有する場面も多い
不動産・新興グロース ── 金利上昇が二重に効く
不動産は、借金をして物件を買うビジネスです。金利が上がれば、そのまま借入コストの増加につながります。
加えて、不動産や新興の成長株は「将来の成長」への期待で買われている面が強いため、セクション1で説明した「金利が上がると遠い未来の価値が目減りする」という理屈が二重に効きます。日米そろって金利上昇方向という今の環境は、この業種にとって最も向かい風になりやすい組み合わせです。
内需・ディフェンシブ ── 逆風と追い風が混在
医薬品や食品、電力といった業種は、景気に左右されにくいため、相場が不安定なときの受け皿になりやすい性質があります。実際、8月26日には医薬品が業種別の上位に入りました。
ただし今は原油高がコスト増として効いている点に注意が必要です。円安も、原材料を輸入する企業にはマイナスに働きます。「安全な避難先」と単純に考えず、コスト面の逆風とセットで見てください。
シナリオ分析:上がる場合と下がる場合
今週は材料が多いので、頭を整理するために「金利の軸」と「AI需要の軸」の2つで考えることをおすすめします。この2つは別々に動きます。片方だけを見ていると「決算が良いのになぜ下がるのか」という混乱が生じます。
📈 楽観シナリオ(落ち着きを取り戻す場合)
以下の条件がそろえば、金利への警戒が和らぎ、AI需要という本来のテーマに相場の関心が戻る展開も考えられます。
- 9月4日の米雇用統計が市場予想より弱く、9月利上げの観測が後退する
- アメリカの10年金利が4.6%台から低下し、成長株への圧力が緩む
- TOPIXの続伸が途切れず、市場全体の底堅さが確認される
- 円安が160円台で一服し、輸入コスト増と介入への警戒が和らぐ
- AI関連の設備投資の発表が続き、需要の持続性があらためて確認される
📉 悲観シナリオ(下押しが強まる可能性)
- リスク①:米雇用統計が強く、9月利上げが現実味を帯びる
すでに利上げ観測は40%台から60%前後へ上がっています。雇用が強ければ観測はさらに高まり、金利上昇を通じてAI・半導体や不動産に逆風が強まる可能性があります。 - リスク②:週明けの「下に窓を開けた」スタート
CME日経先物は65,780円と東京終値より約620円低い水準です。安く始まった後にさらに下げるのか、戻すのかは始まってみないと分かりません。加えて月曜は8月最終営業日で、月末特有の持ち高調整が出ることがあります。 - リスク③:メモリー価格による利益率懸念の広がり
「売上は伸びたが利益率は下がる」という見方がAI関連全体に広がると、good newsが株価に反映されにくくなります。売上ではなく利益率に注目が移るかどうかが分かれ目です。 - リスク④:円安の進行と介入への警戒
すでに一時160円20銭。ここからさらに円安が進めば、政府・日銀の動きがあらためて意識されやすくなり、輸入コスト増も内需企業に効いてきます。
週明け以降の注目ポイント(8月31日週〜)
- 寄り付きでどれくらい下に窓を開けるか。先物の水準どおりなら安く始まります。寄り付き直後は値動きが大きくなる場合があるため、一度確認することも選択肢です。
- 金融株と半導体株の動きが分かれるか。「金利上昇は金融に追い風、成長株に逆風」という関係が実際に表れるかを確かめると、金利と業種の関係が体感として理解しやすくなります。
- TOPIXが8日続伸を維持できるか。日経平均が下げてもTOPIXが持ちこたえるなら、市場全体の底堅さは続いていると読めます。
- ドル円が160円台に定着するか。さらに円安が進めば政府・日銀の動きが意識されやすくなります。逆に160円を割り込んで戻すなら、円安の勢いが一服したと見ることもできます。
- 売買代金が8兆円台を維持するか。夏枯れで7兆円を割り込んでいた時期から、金曜は8兆1,223億円まで回復しました。参加者が戻ってきているかの目安になります。
焦点は完全に「金利」に移りました。ウォーシュ議長の発言で9月利上げの可能性が現実味を帯び、それを裏づけるか否かを9月4日(金)夜の米雇用統計が判定します。
雇用が強ければ利上げ観測はさらに高まり、金利上昇で成長株には逆風。弱ければ観測は後退します。それまでは方向が定まりにくく、日々のニュースで振られやすい地合いが続くと見ています。
- 8月31日(月) 8月最終営業日。機関投資家の月末の持ち高調整が出やすい日です。この日の値動きだけで相場全体を判断しないほうが無難です。
- 9月1日(火) 中国・製造業PMI、米ISM製造業景気指数、米JOLTS(雇用動態調査)。世界の景気と、アメリカの求人の実態を確認する日。
- 9月3日(木) 米・ADP雇用統計、ISM非製造業景気指数。金曜の雇用統計の前哨戦。
- 9月4日(金)夜 米・8月雇用統計。今週最大の焦点。9月利上げの判断材料となり、強ければ利上げ観測がさらに高まります。
- 随時 中東情勢と原油。不透明感が継続。原油の振れが資源・運輸に影響します。
- 随時 ドル円と日米の金利。160円接近と、日米の金利差の動きに注目。
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